—ビジネスパーソンからみたクリエイティブとは—
成元 たとえば、ビジネスパーソンからみたクリエイティブとの「考え方の違い」について率直に思ったことや感じたことなどがあれば教えてください。
深野 私たちはお客様の要求に応えることが根底にあります。お客様に自分たちが作ったものを渡してどうでしょうというよりも、どんなものを作ってほしいですか?みたいなところで、それを形にするっていうイメージをちょっと思っちゃってるんですよね。クリエイティブっていうよりも、まあ確実に形にするっていうその真面目さというか。
成元 はい。
深野 今回で言えば動画みたいなものが見えた時には、なるべく早くなるべく良い動画を作ろうみたいな感じになるんですよね。
成元 生産性重視。
深野 そうですね。なので要約すると、私たちは結構妥協点を見つける折衷案だったりを見つけるっていうのが染み付いてるっていう感覚ですかね。
成元 なるほど。
深野 その方が企業として合理的ですし良いことなんですけど、クリエイティブの人たちってどこまで自分の表現力で最高のモノを作れるかっていう感覚を持ってるなあっていうのがあって、今回その例えで言うと、私たちの要。
成元 要。
深野 当初は、3 分ぐらいの動画だったはずなんですよね。
成元 ええ、そうですね。
深野 なんですけど撮影の素材を撮って編集していく上で 6 分ぐらいになっちゃいましたと。
成元 そうですね。
深野 私たちは 3 分じゃないからダメっていうのが、ビジネスパーソンの感覚なんですけど、仕上がってきたその作品をみた時に 6 分っていう長さを感じさせない内容でした。むしろ私たちが作りたかった映像ってこういうものみたいな。
成元 3分という縛りがある場合は勿論3分で完結させますが、今回はそのような縛りはなく3分程度という流れで進んでいった中で、KOAさんの魅力を最大限に引き出した結果、6分42秒になりました。
深野 変な妥協をせずに作り切ってくれたことで、何か最高のモノが貰えたというか、やっぱクリエイティブの方々って自分たちができる最高の仕事をしようっていう感覚を持ってるんだなぁと。
成元 これが正解か否かはわかりませんが、その理由を説明し映像を確認して貰いクライアントが納得すればそれが正解です。しかし、いろんな制約もありますし時間も限りがある中で、すべてが思い通りに事が進むとは限りませんし、今回現場に入って想定外な事も起こりました。ですが、それを言い訳や妥協点にするのではなく、臨機応変に創意工夫で対応していく。泥臭く粘る事がNAROUスタイル。ぜんぜんクリエイティブじゃないですね(笑)
深野 いえいえ(笑)。私たちはその 1 人 1 人がクリエイティブな存在だといいんですけど、実態はやはり企業としてやらなければならない各々の役割を果たさなければいけないっていうその真面目なところで。しっかりこなせるようにある程度妥協したり諦めたりすることが必要でそれが組織なのかなって思うところもあるんですけど。
成元 その着地点っていうんですかね?要はそこを見つけないと永遠に終わらないってことですよね。
深野 そうですね。
成元 それはありますよね。限られた時間の中で。
深野 はい。
成元 ただ、NAROUは予算以上のモノをクライアントに届けることをポリシーとしています。例えば、 3 分で完結する内容でしたらそれが良いに越したことはありませんが、必ずしもそうじゃない場合、妥協して置きにいったような映像に仕上げるのは気持ちが悪い。もうそこは採算度外視してでもやる。じゃないとそれ以上を超えるものが絶対にできないし、考えようともしてないってことだと思いますから。そこは妥協できない。このぐらいだったらこれぐらいでいいねっていうのは、やはり違うかなと思うんですよね。
深野 そうですね。それで言うと脱線はしますけど、今 AIで動画作ったり編集したりとかってあるじゃないですか。
成元 はい。ありますね。
深野 その作成の高さは当然認めるべきなんですけど、結局AI に命令を入れて向こうが汲み取ってどれだけ作れるかっていうだけの話で、何か自分でそれより深掘らなきゃいけないっていう気づきがないと多分その自分が命令した分以上のものってそこまで出てこないんですよね?
成元 そうですね。
深野 だから動画制作というところだけで言えば、AIの方が優れてるのかもしれないですけど、やはりこういうちゃんと人間と関わるっていうことで、自分が気づいていない気づきを得る、視点を得ることがやはりクリエイティブな思考を持っている人間とあくまでもそういう人たちを模倣したAIとの差なのかなっていうところは感じますね。
成元 そうですね。目的により使い分けていくことが大事ですね。
深野 そうですね。
成元 私も深野さんと話していて気が付かされることもありますし、だからこそ違いを楽しむというか。両者の良いところをいかに生かして最後まで共に走れるか。考え方が違うことをマイナスにとらえるのではなく「違いを楽しむ」ことができればそこからシナジーが生まれきっと新しい世界が広がると思います。前例がないことを前提として考える。もっと柔軟な思考で取り組んで行ければ思わぬアイデアが沸いてきたりします。
深野 そうですね。
成元 そういったことを一緒に楽しみたいっていうのがあって。
深野 わかります。クリエイティブの話で言うと、私たちって相談する相手も社内の人間が多いですしで、そのようなモノを作ろうって思った時に思いを共感してもらう人も、やはり社内になるじゃないですか。
成元 はい。
深野 会社でそういう映像を作ろうとすると、視点の違いだったり、新しい気づきみたいなものって、クリエイティブな思考と繋げるのはかなり難しいですよね。
成元 そうかもしれませんね。
深野 だから餅は餅屋じゃないですけど、私たちはKOAに関するプロではありますけど映像に関するプロではないので、プロとしての情報だったり提案だったり意志っていうのは持っていますが、それを映像にするというのは餅は餅屋で。
成元 相乗効果が確実に生まれましたし、やはり世界が広がると思うんですよね。目的が違うから取り組み方も違うし。
深野 はい、そうですね。